くまに人気がある理由|くまのぬいぐるみはなぜかわいいの?

 

2021.6.15 2021.8.17

 
みなさん、くまと聞くとどんなイメージを思い浮かべますか?

人を襲ってくるかもしれない怖い存在だ!と思いますか?

それとも、くまのぬいぐるみやキャラクターを思い浮かべてかわいいなと思いますか?

もともとは同じくまなのになぜ「怖い」と「かわいい」の正反対のイメージが浮かぶのでしょうか。

よく考えると不思議ですよね。

 

「かわいい」くまは今やたくさんのキャラクターになっているし、くまをモチーフにしたグッズはとても人気があります。

なぜ「怖い」はずのくまが「かわいい」ぬいぐるみやキャラクターになっていて、なぜ人気があるのでしょうか?

このコラムではそんな疑問を解決すべく、怖いはずのくまがなぜかわいい存在になっているのか、そしてなぜこんなにもくまに人気があるのか、探っていこうと思います。

かわいいくまの起源はテディベア

赤ちゃんとテディベアが並んで座る後ろ姿

●くまといえばテディベア

くまというと、中でもくまのぬいぐるみ、つまりテディベアは特に人気がありますよね。

わたしがくまを好きになったきっかけも子どもの頃にもらったテディベアでした。

青い帽子をかぶったしろくまのテディベアで、今でも大事にとってあります。

同じように子どもの頃にテディベアをもらったことがあるという方は多いのではないでしょうか?

実際に欧米では出産祝いとしてテディベアは定番なんだそうです。

 

また、くまのキャラクターというとくまのプーさん、パディントン、ジャッキー、リラックマ、テッドなどなど、人気者がたくさんいますよね。

くまモンやダッフィーなど比較的最近になって誕生したくまも多いかと思います。

その一方でくまのプーさんやケアベアは昔からの人気者ですね。

くまのプーさんは1926年のイギリスの児童小説を原作としています。

ケアベアは1982年にアメリカで生まれました。

 

実はテディベアは、これよりも前の1902年に誕生しています。

このように考えると、本来は「怖い」くまを「かわいい」ものとした最初の存在はテディベアであると言えそうですね。

●テディベアの名前の由来

さて、ではそのテディベアはどのようにして生まれたのでしょうか?

テディベアの誕生には今から120年程前に2つの場所で起こった出来事が関係しています。

 

まずは1902年のアメリカでテディベアという名前が生まれました。

テディとはいったい何のことでしょうか?

実はある人物の愛称を指すと言われています。

その人物がアメリカ合衆国の第26代大統領であるセオドア・ルーズベルトです。

Theodore(セオドア)の愛称がTeddy・Teddie(テディ)ということのようですね。

 

1902年、ルーズベルト大統領が狩猟に出かけた際、お付きの者に差し出された瀕死のくまを撃たなかったというエピソードが新聞に載りました。

新聞を目にした人々は、瀕死のくまを撃たなかったのは大統領の優しさであると称えたそうです。

その流れの中で、あるお菓子屋さんが一体のくまのぬいぐるみをつくり、そのぬいぐるみにテディベアと名付けたことが名前の由来となりました。

話はそれますが付け加えておくと、実際には大統領がそのくまを撃たなかった理由は優しさから来たものではなかったという点が残念ですが…

●テディベアの人気を押し上げたシュタイフ社

さて、テディベアの名前が生まれたのはアメリカでしたが、それを人気者にしたお話の舞台は同時期のドイツです。

1847年生まれのマルガレーテ・シュタイフ(シュタイフ社創業者)は左手しか動かせず、車いす生活を余儀なくされていました。

しかし、彼女は努力の末に裁縫の技術を習得し、お店の前に行列ができるほどのゾウのぬいぐるみを生み出しました。

そんな彼女の甥リチャードのアイデアで、後に生み出したのがくまのぬいぐるみです。

くま好きには憧れのシュタイフ社のテディベアの誕生ですね。

これがアメリカのバイヤーの目にとまり、ブームが巻き起こりました。

人がくまをかわいいと感じる理由

白いテディベア

●かわいいに関する研究 ベビーシェマ

テディベアの誕生についてみてきましたが、大統領を称えるエピソードがもとでブームが巻き起こり人気が出たとはいえども、そもそもかわいくなければその人気は長続きしませんよね。

売り出されたテディベアには人々を魅了するかわいさがあったのです。

実は、わたしたちが「かわいい」と感じるのには心理学的な理由があるのだそうです。

そうした有名な研究にローレンツ(Lorentz,1943)のベビーシェマに関するものがあります。

以下、研究内容の抜粋です。

 

ヒト,イヌ,トリなど多くの生物に共通する赤ちゃんの形態的・行動的特徴を調べた。そして「体に対する頭の大きさの割合が大きい,顔より頭蓋のほうが大きい(大きい額),目が大きく丸くて 顔の中の低い位置にある,鼻と口が小さく頬がふくらんでいる,体が丸くふっくらしてやわらかい,手足が短くずんぐりしている,動作がぎこちない」など,ベビーシェマと呼ばれる特徴を見いだした。この特徴が大人の愛情を引き起こし,世話や保護を受けやすい生物的仕組みがあると考えられた。

●くまにもベビーシェマは当てはまる?

このベビーシェマの特徴はテディベアや、くまのキャラクターにも見られるのでしょうか?

テディベアの写真やくまのイラストに照らし合わせて確認してみましょう。

 

 

(〇)体に対する頭の大きさの割合が大きい

例えば日本人は7頭身が平均だと一般的に言われていますが、写真のくまはみな3頭身前後といったところなので頭の大きさの割合が大きいです。

テディベアは座った状態のことが多いので、体感的にはより頭の大きさが大きく感じますね。

近頃では、より本物のくまに近いような頭が小さく体が大きなくまのイラスト等も見られますが、昔から人気のあるテディベアやキャラクターにおいては当てはまると言えます。

(〇)顔より頭蓋のほうが大きい(大きい額)

ここでいう顔より頭蓋のほうが大きいというのは、おでこが広いと言い換えて差支えないかと思います。

写真を見ると個体差はあるものの、概ね顔の上半分をおでこが占めています

これも当てはまると言えるでしょう。

(〇)目が大きく丸くて顔の中の低い位置にある

この写真のくまに限らず、くまの目は大きく丸く描かれることが一般的ですよね。

位置も顔の中心かそれよりやや下に位置する鼻に寄せて描かれます。

テディベアやくまのキャラクターの目は、人間の顔の目の位置と比べると圧倒的に低い位置にあることがわかります。

(△)鼻と口が小さく頬がふくらんでいる

鼻と口が小さいという点に関してはどうでしょうか。

テディベアやくまのキャラクターの鼻は小さい場合もありますが、むしろ大きなことのほうが多いかもしれません。

中央の写真のように、大きな鼻はそのくまのチャームポイントにさえなり得ます。

また、くまには口が描かれたり描かれなかったりしますが、中央の写真のように描かれる場合には一概に小さいとは言えませんね。

頬がふくらんでいるという点に関してはあてはまります。

げっそりしたくまはあまり見たことがありません。みな頬がふっくらとしています。

以上を踏まえると、この項目に関しては完璧にあてはまるとは言えませんでした。

(〇)体が丸くふっくらしてやわらかい

こちらは写真をみると一目瞭然ですね。

どのくまも体には丸みがあります。

特にくまのぬいぐるみは抱きしめたくなるようなやわらかさを持ち合わせています

(△)手足が短くずんぐりしている

こちらはどんな基準をもって短くてずんぐりしていると判断するか難しいところです。

ずんぐりとは太くて短いという意味ですね。

確かに写真のくまの手足は太いものの、長さは体に対して相応であるように感じます。

この項目を完璧にあてはまるとは言い難いですね。

 

以上ベビーシェマの特徴はテディベアやくまのキャラクターにあてはまるのかという確認をしてきましたが、みなさんはどう思われましたか?

わたしの考察では6項目中4項目があてはまりましたので、くまのぬいぐるみやキャラクターはベビーシェマの特徴を有しているとしてよいのではないでしょうか。

くまは人気であり続ける

子どもが片手にテディベアを下げている

●長く人気を誇るくまのキャラクター

テディベアの誕生から「かわいい」と人々に愛され、人気が続くくま。

120年程前に生まれたくまの人気が現代にまで続いているのには、たくさんのくまのキャラクターの活躍があります。

 

テディベアのブーム後、くまのキャラクターの人気を押し上げた存在はくまのプーさんと言えるでしょう。

『くまのプーさん』は1926年のイギリスで刊行されました。

作者はアラン・アレクサンダー・ミルン(A.A.ミルン)。

イラストは挿絵画家のアーネスト・ハワード・シェパード(E.H.シェパード)によるものです。

A.A.ミルンは息子クリストファー・ロビン・ミルンがお気に入りのくまのぬいぐるみで遊ぶ様子を記していくことで、この物語を執筆しました。

A.A.ミルンの前著が高い評価を受けていたことも手伝って『くまのプーさん』は人気を博し、1930年には本格的な商品化の動きが現れ、1966年にはディズニーによりアニメ化がされたのです。

その後の人気ぶりは皆さんご存じの通りです。

 

そして、くま人気の歴史を辿る中で、もう一つ忘れてならない存在がケアベアです。

ケアベアは1982年にアメリカのカード会社「アメリカン・グリーティングス社」によりカードの挿絵として誕生しました。

その後、テディベアとしてのケアベアも誕生し、現在もグッズが販売されるなど人気が続いています。

●新しく誕生しているくまのキャラクター

現代にもくまモンや、くまのがっこうのジャッキーなど、多くのくまのキャラクターが誕生しています。

これはテディベアや、くまのプーさん、ケアベアなど昔から愛されるキャラクターたちがくま人気の基礎を築き上げ、本来の「怖い」くまとは全く違った「かわいい」イメージを定着させてくれたおかげだとわたしは考えます。

くまが愛されているからこそ、新しいくまのキャラクターが生まれて、また愛される。

くま好きにとってはたまらなく嬉しいことです。

さいごに

床に座るテディベア

考察をまじえながら、怖いはずのくまがなぜかわいい存在になっているのか、そしてなぜこんなにもくまに人気があるのかについて解説をしてきました。

その理由や歴史を知ると、さらにくまを好きになってしまいますね。

最初のテディベアが生まれてから100年以上経った今でも、くまが愛されているのは本当に素敵なことです。

新しいくまのキャラクターやかわいらしいくまのグッズがどんどん生まれていて、これからもその魅力は高まり続けていくのだと思います。

くま好きとしてはこんなに嬉しいことはありません!

 

 

<参考文献>

 

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